【三谷和男先生 プロフィール】
「漢方講座」を担当させていただく、京都府立医科大学東洋医学講座の三谷です。漢方・東洋医学の考え方を、できるだけ平易な表現でお伝えできればと思っています。
2007年3月
私たち医師が患者さんを診察する時、その人の病態をしっかりつかんで治療を進めていかねばなりません。その場合、かたち(形態)とはたらき(機能)の両面から理解してゆきます。
例をあげましょう。「いつも胃の調子が悪くて・・・」とおっしゃる患者さんの胃の検査(俗にいう胃カメラ、つまり胃の内視鏡検査です)をしたとします。
その結果「よかったですね。何ともないですよ。」とお話しするとき、「ええっ?そしたら何でこんなに調子が悪いの?」とすごく不満そうな表情の方が何人かおられますね。「こんなに胃もたれがして、うっとうしい気分なのに、何ともないはずないやん。」というわけですね。
でも、こういった胃の検査はあくまでも「かたち」の検査であって、「はたらき」をみる検査ではありません。
胃の中に「がん」や「かいよう」がないというだけで、「どうもない」という裏付けにはならないわけです。
もっとも、「はたらき」は「かたち」によって大きな制約を受けていますし、「かたち」は「はたらき」により、よく適応するようになります。
漢方では、「はたらき」を「気(き)」、「かたち」を「血(けつ)」と表現し、これらの調和が健康を維持する上で大切だと考えています。
つまり東洋医学の治療とは、調和をめざす作業なのです。
近代西洋医学は、その過程において、身体(BODY)を中心にすえました。精神的なもの(MIND、SOUL)はあまり考えていなかったようです。
病態の把握も、あくまでも病理解剖学つまり「かたち」の変化が中心で、わたしたちのからだを静的なものとみなして考えていきます。ところが、実際の「病人さん」の治療においては、病態は絶えず変化していくわけですね。決して「静」ではなく、絶えず「動」なのです。ですから機能と形態の調和をはかる立場が何よりも必要なのです。
「はたらき」だけの「気」の問題をも治療を進めていく上で取り入れてゆくという漢方治療のかんがえ方、ぜひ実感して下さいね。もっとも、最近では西洋医学の分野でも心療内科をはじめ、MINDやSOULをBODYとともに考えるようにはなってきていますが・・・。
そして、「血」は、広義の循環障害と考えられます。お医者さんから「血のめぐりが悪いですね、冷えてませんか?」とか言われたことありませんか。
婦人科領域では、よく使われる概念です。「血の道症」なんてね、昔からよく言われてきた病態の一つです。こういった「気」「血」は、全身性である場合もありますし、局所的な症候である場合もあります。それでは、今ひとつの「水(すい)」はどうでしょう。この概念は、元々「血」に含まれていたものです。
しかし、東洋医学的には水分代謝異常として独立した病因ととらえてよいでしょう。これは、舌をみるとよくわかりますよ。飲み過ぎた翌日など、是非ごらんになってください。ボテッとした舌になっているはずです。
このように、漢方治療では、生体を気・血・水という疾病概念でとらえ、治療内容(生薬)もまた気・血・水に分類して、その組み合わせによって、ひとりひとりに見合った最善の治療薬(具体的な薬方)が与えられています。