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漢方講座

 

三谷和男先生 プロフィール
「漢方講座」を担当させていただく、京都府立医科大学東洋医学講座の三谷です。漢方・東洋医学の考え方を、できるだけ平易な表現でお伝えできればと思っています。

2006年12月

未病ヲ治ス

私たちの基本的な姿勢の一つに「未病を治す」ことが挙げられます。

中国の古典に「聖人ハ已(い)病ヲ治セズシテ未病ヲ治ス、已乱ヲ治セズシテ未乱ヲ治ス」という一文があります。

つまり、すでに病気になってしまってから、あれこれ必死になって治療するのではなく、現在はまだ病気とはいえないけれど、何となく元気のない時期にうまく適応できるように生活全般の指導を丁寧にしてゆく必要があり、それが根本的に病を治すことにつながる、ということが述べられています。

医師は「患者さんを診察してただお薬を出す」だけでは不十分です。その方がどんな食生活を送っておられるのか、運動を心がけておられるのかも丁寧にお話しないといけません。

五十代半ばの男性です。「先生、健康診断で高血圧といわれました。早く血圧を下げてください。」ずいぶんせっかちな方です。

「わかりました。血圧はどのくらいですか。」「上が160で、下が100だったと思います。」「いつの血圧ですか。」「健康診断の時です。」「でも、今日は130と84ですね。」「でも早く薬を飲まないと、どんどん上がっていくんと違いますか。」「まあまあ、落ちついて。」患者さんは、何で?という顔をしておられます。

私は話を続けます。「夕べは何時ごろに休まれましたか。」「午前1時は回ってましたね。」「お仕事の関係ですか。」「いや面白いテレビ番組があって遅くなったんですわ。まあ、いつものことですよ・・・。」「(それはいけませんね、と思いつつ)えーっと、タバコを吸われますか。」「一日に一箱か、まあそんなとこです。そんなことより、早くお薬を出してください。」

私は、患者さんの脈を診たり、舌を診たりしながらその患者さんの人となりや生活全般について理解しようと努めます。患者さんは、とにかくさっとよく効くお薬を出して欲しいと思っておられるわけですが、東洋医学の治療では「一に養生、二に看護(看病)、三四がなくて五にクスリ」といわれるように、お薬がよく効く状況を整える努力が医師の側に求められます。

「病を医するものは自然なり」と医聖ヒポクラテスも述べていますように、自然治癒力は医療の原点です。

繰り返しになりますが、「未病」の定義は、「未(いま)だ、病(や)まず」ですから、症状が生体にあらわれていなくても、体の中に病(やまい)が成立しつつある状態です。

漢方の考え方では、病気の原因を、内なる原因(これを内傷といいます)と外からの原因(これを外感といいます)に分けて考えていますが、どちらが主かといえば、「邪気ノ侵入」ということで、外感が主と考えています。

「未病」とは、あるレベルまで外邪の侵入を受けてはいるが、内臓(五臓)にまで影響が及んでいない、つまり、生体の抵抗力(この力を衛気(えき)といいます)は十分に機能している状態と考えられます。抵抗力が勝っているため、発病しないということです。

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