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漢方講座

 

三谷和男先生 プロフィール
「漢方講座」を担当させていただく、京都府立医科大学東洋医学講座の三谷です。漢方・東洋医学の考え方を、できるだけ平易な表現でお伝えできればと思っています。

2006年10月

東洋医学のまなざし

私が勤務しておりました 大阪市住之江区 の木津川厚生会加賀屋病院では、診療所時代も含め発足以来40年以上、漢方を中心にした医療機関として、患者さんが

ところで、一般の洋医学的診断および治療では、患者さんと接する場合、あまりにも「身体的な病気」に注意が向けられて過ぎているのではないでしょうか。

例えば胃が悪い、循環器に問題がある、いや膵臓が原因というように、局所的な所見、人間の身体の一部の問題で全てを説明してしまおう、という傾向になってしまっています。そして、その人が社会的な存在であることや精神的な苦しみがどうなのかに残念ながら関心が薄いことが多いようです。その人を取りまく周囲の環境までも、治療を進める上では大切な条件といった患者さんを社会的な存在とみる発想は、東洋医学の優れた視点です。

その遠因として、医学教育も含めた明治以降の医療制度の問題があげられます。西洋医学の歩みは、個々の事物をそれぞれ別々に、他と独立させて関連性を意識せず認識しようとしてきました。これは、科学(サイエンス)として「個を知らずして全体像は把握できない」という考え方が基盤になっていますから、正しい側面をもっていたといえます。

しかし、こういった方法で認識された「個」を、固定化したもの、静止しているもの、その人の全体から独立したものとみなしてしまうところから問題が生じますね。

なぜならば、人間は、いつも動的な存在だからです。時間的にも、空間的にも決して一つの地点には留まっていません。

一方、東洋医学はどうでしょう。個々の分析よりも結合、つまり「全体」がまずどうなっているのか、をつかむことから治療がスタートします。これが「証(しょう)を把握する」ということです。

私たちが患者さんといろいろなお話をしながら脈を診(み)、舌を診、おなかを診るのは、「患者さんの証をつかむ、東洋医学的に理解する」ためです。

いずれにしましても、「個」も「全体」も共に患者さんを治療していく上で決しておろそかにしてはいけません。個々の意識を大きな全体的なものと結びつけ、一つの運動体として理解される時に、将来の医学の発展があると思います。

どちらが優位か、が問題なのではなく、人間に役立つ医療を目指すという観点が大切です。東洋医学を専門とする私たちは、まず「全体像」をしっかり見据え、西洋医学的な分析(血液検査のデータや画像診断)を判断材料としてしっかり活かすことで、患者さんにとって本当の意味での東西両医学が役に立つことになると考えています。

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